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加速装置(かそくそうち)は、サイボーグアンドロイドなど架空の人型機械体に搭載される、架空の機体制御システム。機体制御知能の知覚・思考・運動速度をモード切替によって高速化する機構。日本では石ノ森章太郎の漫画『サイボーグ009』に登場するものが最も有名で、日本における知名度はこの作品によるところが大きい。

小説に登場する加速装置[]

人間の反応速度を加速するというアイデアが使われた最も古いSF作品は、ハーバート・ジョージ・ウェルズの短編小説『新加速剤』である。ただし、この作品では加速能力を得るために薬物が使われる。

機械としての加速装置が初めて登場したのは、アルフレッド・ベスターの小説『虎よ、虎よ!』(1956年、日本語訳は1964年中田耕治訳)である。宇宙空間に置き去りにされた主人公が、置き去りにした者たちへの復讐に立ち上がるという物語であり、復讐のための武器の一つとして、主人公が自らの体に加速装置を埋め込む。この物語では、奥歯に隠されたスイッチで装置を起動するなど、その後の『009』におけるスタイルの原型が見られる。

『サイボーグ009』に登場する加速装置[]

加速装置のスイッチは奥歯の内側に設けられ、舌によりこれを操作する。ブラックゴーストハイエンド戦闘サイボーグの基本装備の一つで、構想も最も早く、最初の実験体である002(ジェット・リンク)が既に最初期型を搭載している。その有効性が認められ、標準装備モデルの試作体である009(島村ジョー)以降に改造されたサイボーグ体はほぼ全機これを標準搭載し、その上で各機体に特徴的な装備を持たされている。

加速装置の使用中、使用者の体感では、世界がゆっくり動く、あるいはほぼ静止し、「加速」に応じて音は低音域にシフトする(色覚への影響が演出されたことはない)。逆に、周囲から見て加速された機体の運動は目にも留まらぬ速度となり、瞬時に移動したかに見えることもある。発する音声は可聴域を超えて超音波帯にシフトする。そのため、加速中の個体との意思疎通は音声会話ではなく内蔵無線機あるいはテレパシー(001の中継による)によって行われている。

基本的に時間を操作するテクノロジーではないため、使用によって加齢が進むことはない。加速装置そのものの使用制限は時間、回数共に特に設定されていないが、「加速」中の機体は基本的に超高速高負荷運動を行っているため、エネルギーと各部機構を急速に消耗し、放熱が追いつかず過熱する(戦闘用でない服を着ていた場合、空気との摩擦熱も加わって燃えてしまうほどである)。そのため機体の連続高負荷限界が加速行動を制限し「加速装置の使用限界」と俗称される。加速モードに入ったまま静止などの緩慢な動作をしている分には、この制限はいくらでも伸びて行く。

加速装置の基本コンセプトとしては、機体の高出力を生かした高速・高機動行動を行わせる際に、特殊な訓練を要さず機体の制御精度を確保するため、何らかの方法(補助電脳の援用、もしくは完全スイッチング)で思考速度を上げる機構と機体の出力リミッタとを連動させたものと考えられる。原作漫画には、加速装置を起動することにより通常モードでは壊せなかった隔壁を破壊して脱出するシーンを、運動方程式を引用して「高速で衝突すると強い力になる」と解説したエピソードがある。しかし、本来は高速で衝突することで強い衝撃を発生する以前に、高出力を発揮して高加速度を得る必要があるので、単純に加速装置の起動によって開放された出力による物理破壊、と理解してなんの差し支えもない。

アニメ版『スカルマン』によって示唆されたところによれば、古代の遺物であるスカルマスクに加速装置らしき機構が内蔵されていた。しかし装着者が生身であるため、使用可能時間はきわめて短く、肉体に重度の損傷を被るというデメリットが存在する。これをサイボーグ化することで克服したのが、ブラックゴースト首領のスカールであり、その再現装置が後の00シリーズサイボーグへと受け継がれたとされている。

加速装置の演出上の問題[]

加速装置は時間を操作するものではないため、加速中の物体に対する物理法則は通常と同じものが適用される。従って平面の走行は加速できても、何らかの推進装置を用いない限り、重力下での上下動を加速することは出来ない。具体的には飛び降りた場合の自由落下速度は変わらないし、跳躍を加速することも出来ない(初速を上げると目標点を通り過ぎて高く跳んでしまう)。従って、加速中の機体が全方向に高速に運動するありがちな描写は、壁や天井などの足場がない限りは基本的にあり得ない。加速者は加速に応じて重力加速度が減じていると感じ、具体的には6倍速の状態で月面上に等しい体感と運動になるはずである。

そのため実用上、上下動にも推進器(と逆噴射のブレーキ)を用いることの出来る002のコンセプトが、加速装置を搭載する高速機動戦用の機体設計としては正解であり、009のような加速装置のみの搭載(「黒い幽霊」基地脱出の際のギルモアの発言によれば、002ほどではないが多少の飛行能力はある)は、出力制御の面はともかく、開けた場所での高速機動戦においては大きな制限を課せられる。具体的には、跳んだ瞬間に投げ上げられた石同様に狙いやすい的になってしまうため、上下動に関しては何らかの工夫が必要と思われる。逆に極端に前傾したマンガ的な走行姿勢には、空気抵抗を減らすなどの観点から鑑みても必然と根拠が与えられる。そのようにして、脚力のベクトルを上より前に多く振り向けないと、月面跳びよろしくぴょんぴょん飛び上がってしまうからである。

東映特撮作品に登場する加速装置(相当品)[]

  • 仮面ライダーシリーズスーパー戦隊シリーズ
    サイボーグ009』の作者である石森は1970年代、東映特撮ヒーローの原作を務めており、スーパー戦隊シリーズの第2作『ジャッカー電撃隊』で加速装置が使用されている。主人公の桜井五郎(彼もサイボーグである)が「加速装置!」と叫んで自動車を走って追い抜く場面がコマ落とし撮影で表現されている。
    また、『仮面ライダー (スカイライダー)』(1979年)の怪人グランバザーミや『電子戦隊デンジマン』(1980年)など、同様の手法で加速表現がされている。
    • 平成仮面ライダーシリーズ
      21世紀になってから製作された仮面ライダーシリーズでは、サイボーグなどではない装着変身タイプのライダーが加速装置的なものを使用する作品がある。
      仮面ライダー555』に登場する仮面ライダー555(ファイズ)は、腕時計型の特殊ツール「ファイズアクセル」を使用することによって10秒間だけ通常の1000倍の速さ(約マッハ50)で行動できる。
      仮面ライダーカブト』に登場する仮面ライダーカブト他のライダーたち(マスクドライダーシステム)は「クロックアップ」という特殊機能を発動させることで普通の人間からは目にとまらないほどの速さで行動できる。クロックアップ機能はカブトたちの敵であるワーム(成虫体)の能力を元に開発されたらしく、双方がクロックアップして動きが止まった世界で戦う演出がしばしば見られた。また、カブトのライダーキックは基本的に飛び蹴りではなく回し蹴りであり、先述した演出上の問題への配慮がされていた(ただし(番組製作の都合により)場所移動するときに行われる、すれ違い交差しながらの戦闘という表現中は、普通に飛び跳ねながら移動している)。また強化型のハイパークロックアップでは時間移動可能(劇中のセリフ及び劇場版結末)であるため実はタイムマシンである。
      仮面ライダーディケイド』では、仮面ライダー555や仮面ライダーカブトが登場しており、「ファイズアクセル」と「クロックアップ」の加速状態の速さがほぼ同速であるという設定となっている。また、『ディケイド』では、カブトの「クロックアップ」装置の暴走に際し、減速装置とも呼べる「クロックダウン」を開発している。
  • 特捜エクシードラフト
    1992年の『特捜エクシードラフト』では強化服の足に付ける追加装備「ターボユニットW」が設定されている。これは足首に噴射装置を設置してマッハ1で走るもので、厳密には(神経系の反応速度全体を上げる)加速装置ではないが、バイオニック・ジェミー(後述)同様、スローモーションで表現された。

他のフィクション作品に登場する加速装置(相当品)[]

  • エイトマン』『サイボーグ・ブルース』(平井和正桑田次郎
    超高速機動性能を特徴とする機械体ヒーローとしてまず挙げられる作品。『エイトマン』では、超高速機動に関して特に段階的なモード切替を描写してはいない。その要因の一つには、エイトマンはサイボーグではなく作中で「スーパーロボット」と称される、人格を移植した完全機械体と設定されていることが挙げられる。
    『エイトマン』の原作者平井自身によるSF小説『サイボーグ・ブルース』では、主人公は脳を残しており、高速機動時には補助電子頭脳によって短時間機体制御を肩代わりさせることで高速運動中の機体制御の精度を確保している。従って補助電子頭脳にキャッシュ出来る行動命令の量が、すなわち高速機動モードの時間的制限となる。この作品では、高速機動中の主人公の体感描写などからも、主人公は実質上「加速装置を搭載したサイボーグ」と同等のものと見なすことが出来る。ただしこの小説では、サイボーグ体の物理強度は低く「高速で体当たり」などもっての外で、高機動中での物体との接触は重大事故とされ、高機動はもっぱら「窮地を脱し背後を取る」ために用いられている。
  • 600万ドルの男』『バイオニック・ジェミー
    海外作品ではやはりサイボーグの活躍するSFアクションドラマ『600万ドルの男』『バイオニック・ジェミー』において、アクションシーンがスローモーションで撮影されている。実際は役者は映像全体と同じくスローに動いているのであるが、短時間のうちに起きた出来事をスローモーションで紹介する手法に慣れた視聴者に、あたかもなにか高速運動を見ているような錯覚を起させる演出により、主人公ら(の義体)が高速で活動出来る能力を発揮していることを表現しようとしている。
  • 時間救助隊タイマー3』(能田達規
    『時間救助隊タイマー3』(講談社)に登場する「SS(スーパースピード)スーツ」は、装着者の動く速さと考える速さを100倍にする機能のほかに、重力加速度を10倍にする機能「Gブースター」を持っており、加速時でも通常と同じ様に行動できる事について説明がされているのが特徴である。また、「Gブースター」の機能を止めることにより、加速時の体感重力を10分の1にすることもできる。
  • リターナー
    映画『リターナー』では、未来の道具として、体感速度を20倍に高めるソニックムーバーが登場している。
  • 銃夢』(木城ゆきと
    コミック『銃夢』では、脳の処理速度をアップ(クロックアップ)することによりサイボーグ体の性能を極限まで引き出すモードらしきものがある。
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